■御嶽山火山防災協議会 学習会・ワークショップ
■日時:2016年1月13日
■場所:長野県木曽町 長野県木曽合同庁舎
御嶽山火山防災協議会のコアメンバーなど31名が参加しました。今回は防災担当者だけでなく、関係自治体の環境部局や建設部局、消防、警察、気象台からも参加がありました。今回の学習会・ワークショップは、御嶽山の地域火山防災に関わるメンバーが、学習会を通して、御嶽山噴火以後の他火山の危機対応の事例(箱根町)と御嶽山の噴火活動史を学び、ワークショップを通して、御嶽山の地域火山防災の課題を共有し課題解決に向けた意見交換を行うことを目的に行いました。また、今後、一般地域ステークホルダーとどのような形で対話、協働を行っていくべきか、意見交換しました。
午前中の学習会では、箱根町・山口賢氏、産業技術総合研究所・及川輝樹氏にご講演いただきました。
山口賢氏には、「箱根山大涌谷噴火に際しての箱根町の危機対応について」という演題でご講演いただきました。2014年の御嶽山噴火を受けて、箱根山の火山防災の方針を見直し、突発的な噴火を含めたあらゆる事態を想定した防災体制の構築を行ったことやその具体的内容、その後、実際に起こった昨年2015年の大涌谷噴火に際しての危機対応に関して、大変わかりやすくお話いただきました。噴火警戒レベルレベル1の段階での立ち入り禁止区域設定の決断等、しっかりした防災体制を構築され、実際に運用された実績は、御嶽山の地域防災の担当者にとって大変参考になる内容でした。
及川輝樹氏には「御嶽火山-その生い立ちと噴火-」という演題で、御嶽山の78万年にわたる長い噴火史と最近の噴火の特徴について、火山地質学の観点から、詳しくご講演いただきました。噴火の予知・予測のためには監視・観測だけでなく、地質学によって研究された過去の噴火事例を参考にする必要があるとのことでした。特に御嶽山は1979年以前の噴火の歴史的記録がないため、噴火史と噴火の特徴を明らかにするためには、地質学の研究が重要です。御嶽山は2014年の噴火によって大きな人的被害を出し、社会的には注目されているものの、最近の噴火は、火山噴火としては小規模といえますが、長い歴史の中では壊滅的で大規模な噴火を何度も起こしたこともあること、噴火の形式が多様で複雑な活動をしていることなど御嶽山への理解が深まる内容でした。
ワークショップでは、昨年10月29日の行政防災担当者ワークショップで議論された御嶽山の課題を踏まえて、火山情報伝達、避難計画・訓練・実施、火山防災教育、全体コーディネーションについて、より広範囲のメンバーで更に議論を深めるために、A,B,Cの3つのグループに分かれてグループワーク、意見交換を行いました。
火山情報伝達については、発災時、登山者に対してエリアメール、同報無線による情報発信が有効であるが、不感地帯などの問題があり、サイレンを鳴らすなどのアナログ的な方法も含めた複数の伝達方法を用いるべきという意見が多く出ました。
避難計画策定・訓練・実施については、御嶽山を挟む岐阜県と長野県で統一した避難体制・避難マップ作りや両県共同の訓練を求める意見が多く出ました。実際に御嶽山の噴火を経験した地域であり、「噴火の経験を踏まえた火山災害・噴火時の救助や捜索の体制作りが大事なのではないか?」という声が上がっていました。
火山防災教育については、住民や小・中学生に対する防災教育が必要という意見とともに、行政職員の知識不足を指摘する声も多く、先進的な取り組みをしている自治体等への視察研修や学習などの提案がありました。その他、罹災後の被災者の支援や入山規制・風評被害による観光業への経済的影響に対する支援も課題に挙がっていました。
ステークホルダーとの対話・協働に関しては、意見交換したいステークホルダーとして、消防団、防犯委員などの住民の代表、山小屋、宿泊施設、スキー場、登山ツアーの企画会社、スポーツ用品店、山岳パトロール隊などの登山関係者、観光業を含めた商工業者・商工会、報道関係者、協議会構成員の民間組織の若い方、御嶽教信者、被災者のカウンセリング・治療に当たった医療関係者などが挙がっていました。
今回のワークショップは、参加者の範囲が広がったことで、前回の行政防災担当者ワークショップでの議論と異なる観点からの課題が出て議論が深まりました。本プロジェクトのワークショップも3回目となりましたが、参加者にとって組織・立場を担わないで、様々な視点から率直な意見交換ができる場として機能しており、後の火山防災協議会や一般地域ステークホルダーと協働に向けて有意義なものとなりました。