■焼岳火山噴火対策協議会 学習会・ワークショップ
■日時:2016年1月27日
■場所:長野県松本市 グレンパークさわんど
焼岳火山噴火対策協議会のメンバーなど36名が参加しました。今回は防災担当者だけでなく、関係自治体の観光部局、建設部局、消防、警察、砂防、林野庁、気象台などより広い範囲のメンバーが参加しました。今回の学習会・ワークショップは、焼岳の地域火山防災に関わる参加者が、学習会を通して、焼岳に関する火山研究の成果を学び、ワークショップを通して、焼岳の地域火山防災の課題を共有し課題解決に向けた意見交換を行うことを目的に行いました。また、今後、更に広い範囲でのステークホルダーミーティングを計画するにあたり、一般地域ステークホルダーとどのような形で対話、協働を行っていくべきか、意見交換しました。
午前中の学習会では、信州大学・三宅康幸教授に、「焼岳の火山活動について」という題名で、噴火史から最近の活動まで、焼岳の多様な火山活動全般についてご講演いただきました。特に2300年前のマグマ噴火、1962年水蒸気噴火、1995年の中の湯水蒸気爆発について詳しくお話いただきました。2300年のマグマ噴火は、1991-95年の雲仙普賢岳の噴火によく似ており、粘性の高いマグマが溶岩ドームとなり、大規模な火砕流を発生させるような噴火であったとのことで、雲仙普賢岳の写真や体験を交えながらお話いただきました。また、1962年の水蒸気噴火は泥流被害を伴い、噴火活動は1年に及んだことなどを実際の写真や経緯も含めてお話いただきました。1995年の中の湯水蒸気爆発については、詳細な経緯と発生メカニズムも説明していただきました。焼岳は、雲仙普賢岳のような火砕流を伴うマグマ噴火も起こしうること、水蒸気噴火は、過去の頻度から見れば、いつ起こってもおかしくないことが実感できるお話でした。この後の参加者のワークショップでも、ご講演の内容を踏まえて、マグマ噴火を想定した避難や火山ガスについての啓発と情報提供が話題に挙がっていました。
ワークショップでは、昨年10月29日の行政防災担当者ワークショップで議論された焼岳の課題を踏まえて、火山情報伝達、避難計画・訓練・実施、火山防災教育、全体コーディネーションについて、より広範囲のメンバーで更に議論を深めるために、A,B,C,Dの4つのグループに分かれてグループワーク、意見交換を行いました。
火山情報伝達については、他の2火山でのワークショップ同様、発災時の登山者・観光客への情報伝達が議論の中心となりました。エリアメールが情報伝達手段として有効であり、登山時に携帯電話をONにしてもらう、不感地帯を解消すべきという意見に対して、国立公園の規制があって不感地帯の解消は難しく、サイレンを鳴らす、ドローンを使う、登山者同士の連絡方法を考えるなど他の伝達方法も必要という意見も多く出ました。一方で情報手段の拡充をどこまですべきか突き詰めていく必要もあるとの意見もありました。また、外国人観光客に対する情報提供方法も課題として挙げられていました。
避難計画策定・訓練・実施については、噴火警戒レベルに応じた情報伝達、避難誘導方法の計画策定・訓練が必要、観光客・登山者をある程度想定した訓練のブラッシュアップが必要との意見が挙げられていました。火山防災教育については、住民や小・中学生に対する防災教育では、教育に使うツールの内容や作成の仕方、情報の出し方をもう少し工夫すべきとの意見が挙がっていました。また、行政職員が知識不足である、人事異動によりノウハウが蓄積されないといった意見も聞かれました。登山者に防災意識をもってもらうために、ツアー会社による啓発、アルピニスト、アウトドア関係専門メディアによる講演を開催してはどうかという提案も挙がっていました。
ステークホルダーとの対話・協働に関しては、意見交換したいステークホルダーとして、交通事業者、観光協会、宿泊施設、ツアー会社などの観光関係者、消防団、派出所、地域自主防災関係者、学校の先生などの住民の代表、山小屋、登山ガイド、遭対協などの登山関係者、NPO砂防組織、地元メディアなどが挙がっていました。ステークホルダーミーティングのやり方、内容については、これまでの学習会・ワークショップのように講演と意見交換会をセットで行った方がいいのではないかという意見が出ていました。
今回の学習会・ワークショップは、3火山で最後の開催となりました。3火山それぞれ個性があり、ワークショップの参加者の範囲もそれぞれ異なりましたが、このようなワークショップが参加者にとって組織・立場を担わないで、様々な視点から率直な意見交換ができる場として認識されてきました。こうした場での議論を今後の火山防災協議会や地域協働の火山防災に活かせれば、と考えております。