臨床環境学の手法を応用した 火山防災における 課題解決の開発

地域防災対策支援研究プロジェクト

プロフィール

臨床環境学の手法を応用した火山防災における課題解決法の開発

課題名

臨床環境学の手法を応用した
火山防災における
課題解決法の開発

地域名

岐阜県、長野県、石川県

団体名称

名古屋大学大学院環境学研究科

代表者名

山岡耕春(名古屋大学・地震火山研究センター)

参画者名

  • 中村秀規(名古屋大学・持続的共発展教育研究センター)
  • 杉下尚(岐阜県 山岳遭難・火山対策室長)
  • 平松良浩(金沢大学・教授)
  • 大見士朗(京都大学・准教授)

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2017年11月15日 白山火山防災 学習会・ワークショップを開催しました


■白山火山防災 学習会・ワークショップ

■日時:2017年11月15日

■場所:石川県金沢市金沢勤労者プラザ

■講師:山中漠氏(北海道有珠郡前壮瞥町長)

 

  本プロジェクトでは、地域が主体となる火山防災を発展させるために、防災行政担当者をはじめとする地域火山防災関係者が率直な意見交換、課題共有を行う場として、火山防災に関連する講演とグループワーク形式のワークショップを開催してきました。最終年度となる本年度は、昨年度までの意見交換会で出てきた課題を踏まえて、御嶽山噴火以後(本プロジェクト開始後)の火山防災の課題の振り返りと、今後の活動について意見交換しました。

今回の白山火山防災学習会・ワークショップは、石川県金沢市で開催し、行政防災担当者及び土木部局、自然保護センター、気象台、国土地理院測量部、森林管理署、警察、消防団、観光事業者等の火山防災協議会関係者に参加していただきました。参加者数は学習会の一般参加者とあわせて41名でした。

 

 

  午前中の学習会では、2000年有珠山噴火において町長として災害対応にあたられた山中漠氏に“有珠山からの報告「平穏時に火山防・減災活動をどのように進めたか-2000年有珠山噴火災害時の対応連携を事例として-」”というタイトルでご講演いただきました。2000年有珠山噴火の対応は火山防災の成功事例として有名で、この時の噴火では、居住地の近くに火口が開いたり、急激な地殻変動が起こったりしたにもかかわらず、適切な避難誘導が行われ人的被害がありませんでした。山中氏に2000年の噴火対応の現場の様子についてお話いただくとともに、適切に対応できた背景として、それ以前の1977-78年の噴火後の地域の取り組みや行政、地域住民、科学者の連携があったことについてお話いただきました。有珠山地域は、噴石、火砕流の危険性がある区域に1万5千人の温泉街が形成されている世界でも稀な地域で、2000年の噴火において壮瞥町では、自主避難、避難勧告、避難指示という3段階で避難が行われたことが紹介されました。有珠山の噴火史上は小規模な噴火ですが、居住地から数百mのところで開いた火口があり、70mも地面が隆起するなど、生活への影響は大きかったようです。噴火前に避難ができた理由として、住民、科学者、マスメディア、行政からなる防災・減災のための正四面体構造(連携)が成立していたことがあります。噴煙のあがった写真とともに説明していただいた1977-78年の噴火のときも、噴火による直接の死者は出なかったのですが、噴火の予兆と考えられる火山性微動が観測される中、祭りが強行されたり、噴火後一ヶ月で住民が避難解除を求めたりするなど住民の危機意識が薄い状況だったようで、結果として1年後の泥流で犠牲者が出てしまったそうです。それ以後、子供郷土史講座等の継続した火山防災啓発や1995年の国際火山ワークショップの開催などの取り組みが行われ、住民の防災意識と連携が形成されていったとのことです。また、2000年以後の取り組みとして、ジオパーク登録や火山マイスター制度、噴火遺構の保存についても紹介されました。自治体の首長として噴火に対応をされた貴重な経験や壮瞥町での平穏時の取り組みをうかがうことができ、将来の噴火に備えてジオパークや火山防災授業での啓発活動に取り組んでいる白山火山防災関係者にとって、大変有意義な学習会となりました。

 

  


   午後の意見交換会では、6-7人ずつの4つのグループに分かれ、御嶽山噴火以後の火山防災の課題の振り返りと、今後の活動について意見交換しました。登山者への啓発、住民への啓発、行政・協議会の連携について議論が中心となりました。白山では、2014年の御嶽山噴火のように、住民よりもむしろ登山者が被害者となるような噴火が想定されています。しかし、白山が活火山であることを知らずに登る登山客が多く、最近、北陸新幹線の開業もあって外国人も増加しています。御嶽山の噴火以後は、館内看板の設置、チラシの配布、携帯エリアの拡充、登山届けの義務化、パンフレットの多言語化などの努力がなされています。登山者への啓発に対しては、今後の活動アイデアとして登山用品ショップなどでヘルメットキャンペーンをする、山の天気と火山の情報を組み合わせて発信するなどの意見が出ました。また、本プロジェクトで対象とした火山地域の中でも特に住民の火山に対する意識が低いという特徴があります。これに対しては、本プロジェクトで行ってきた小学校での火山防災教育の継続やジオパークの活用、避難訓練の実施などの意見が出ました。行政・協議会の連携の点では、行政担当者が2-3年で異動するため、知識の蓄積や他機関との関係性の継続が難しいことが問題として挙げられました。今後については、個々の課題を深めるワークショップや自衛隊、警察、消防などの現場機関と避難誘導について話が出来る場などを設けたいという意見が出ていました。